メカニズム
elSOLの仕組み
elSOLは、Solana公式のステーキングプールプログラムを基盤に構築されており、既存のSolanaステーキング機構を拡張する形で運用されています。その設計の中心には、安全性・効率性・透明性の3つの条件があります。ユーザーは従来どおりSOLを預けるだけで、ステーキング報酬の受け取りに加え、ネットワーク帯域を扱う機能を利用できます。
elSOL LST のステーキング構造
elSOLは、Solanaの公式ステーキングプールプログラムを利用して発行されます。ユーザーがSOLをデポジットすると、同等の価値を持つelSOLトークンを受け取ります。このトークンは、預け入れたSOLに対する証明であり、その価値はステーキング報酬の増加に応じて徐々に上昇します。
elSOLプールに預けられたSOLは、手数料0%で運用されるMEV対応 elSOL バリデータに委任されます。各 elSOL バリデータはブロック報酬による利益の20%を毎エポックごとにプールへ還元し、この還元分がelSOL全体の利回り向上につながります。この仕組みにより、elSOLはステーキング報酬の最大化と安定的な運用、継続的なステーキング・帯域の獲得を両立します。
SWQoS ステーキング
Solanaでは、SWQoS(Stake-weighted Quality of Service)によって、ネットワーク上の通信優先度がステーク量に基づいて決定されます。elSOLはこの仕組みを利用し、ステークされたSOLに基づく帯域をユーザーが実際に扱えるように設計されています。
elSOLをステークすると、そのステーク量に応じてERPCにて SWQoS 帯域を適用できるようになります。ユーザーは、どのエンドポイントにどの程度の帯域を適用するかを管理画面上で設定します。設定後、次のエポックから適用が有効になり、指定したエンドポイントのリミットがステーク数に応じて更新されます。この処理はステークの委任を変更するのではなく、ステーク量を帯域の重みとして参照し、SWQoSの評価ロジックに反映させるものです。
共有SWQoSエンドポイントを利用する場合、ステークする elSOL に応じてリクエストレート(処理可能な通信量)が決まります。4.2 elSOL あたり 1 リクエスト/秒(1 TPS)が割り当て単位であり、小数点以下は切り捨てとなります。
適用できる上限は現在のERPCプランに依存します。ユーザーは、複数のエンドポイントに対して保持するelSOLを分割して適用することもできます。例として、10 elSOLを保持している場合、2 TPS相当の帯域が利用可能です。1 TPSを共有エンドポイントAに、もう1 TPSをエンドポイントBに適用するよう分割できます。この設定は後から変更可能で、通常はエポック単位で更新されます。
このように、elSOLはステークされたSOLをそのままSWQoS帯域に変換し、ユーザー自身がどこにどの程度の通信性能を適用するかを柔軟に設定できるようにします。
SSP(SOL Staking Power)ステーキング
自分でSWQoS帯域を利用しない場合、ステークされた elSOL をもとに発行される SSP(SOL Staking Power, 1 elSOL ステーキング = 1 SSP)を、SWQoSマーケット上で販売することができます。販売時には希望するVLDレートを設定し、他の利用者や事業者がその条件で購入することで取引が成立します。
SSPの販売が成立した場合、ステーク提供者は指定したレートに応じたVLDをエポックごとに受け取ります。一方、販売が成立しなかった場合でも、共有SWQoSエンドポイントにおける利用量に基づいてVLDが分配されます。
この共有報酬は、マーケットに提供されたSSPのうち、実際に利用されていない分に対して、その未利用分保有割合に応じてSSP提供者に分配されます。
この仕組みにより、ステーク提供者は帯域を直接使わなくても、ネットワーク上で発生する通信利用に対して報酬を得ることができます。また、帯域を必要とする利用者は、バリデータと直接契約することなく、マーケットを通じて必要な量のSSPを購入できます。
elSOLのステークは、このSSPステーキングによって流動化し、帯域の供給と需要が市場原理で結びつく形で運用されます。これにより、ステークの余剰が発生しても、それを有効な資源としてSolanaネットワーク全体に再分配することが可能になります。
VLDトークンの仕組み
VLDは、SWQoSマーケットにおいて帯域を取引するために使用されるトークンで、Validators DAO が発行します。帯域を必要とする利用者はVLDを使用してSSPを購入し、帯域を提供する側はVLDを報酬として受け取ります。この仕組みにより、Solanaネットワーク上で通信資源を適正な価格で交換できる環境が形成されます。
VLDは、ネットワークで実際に必要とされる分だけミントされる仕組みで過剰に発行されることはなく、供給量は需要に応じて動的に調整されます。これにより、極端な価格変動や供給過多による価値の希薄化を防ぎ、市場の需要と供給に基づいた安定したトークン流通を実現します。
VLDには最大供給量が設定されています。需要が増加し、利用量が供給の限界に達した場合には、新たな発行が無くなり、価格が上昇する可能性があります。この仕組みによって、VLDはSolanaネットワーク上での帯域需要を反映しながら、自然に価格が調整されるトークンとして機能します。
SWQoSマーケットは、VLDの取引を通じて需要と供給のバランスを取り、帯域の適正価格を自律的に見つける仕組みとして動作します。実際の需要と供給、利用状況に基づいた取引の集積によって、Solanaネットワーク全体で最も効率的な価格帯が形成されます。
VLDの詳細な設計やValidators DAOとの関係、分配方法については、Validators DAOホワイトペーパーで確認できます。ここでは、elSOLの運用とSWQoSマーケットを支える仕組みとしてのVLDの概要を示しました。