背景

SWQoS帯域へのアクセスの難しさ

Solanaネットワークでは、トランザクションの優先度がステーク量に基づいて決定されます。より多くのステークを設定されたRPCを経由したリクエストは、SWQoS(Stake-weighted Quality of Service)によって高い優先順位で処理されます。この仕組みはネットワークの安定性を保つ一方で、個人や小規模な利用者にとっては非常に高い障壁となっています。
ユーザーが自分のSOLをバリデータやLSTにステークしても、そのステークを自分のRPCやアプリケーションの通信帯域に直接反映させる方法はありません。SWQoS帯域を得ようとする場合、自らバリデータを運用するしかありませんが、そのためには高度な技術と相応のコストが必要です。結果として、多くの開発者やプロジェクトはSolana本来の性能を十分に活かすことができずにいます。
一方で、既存のバリデータの中にはSWQoS帯域を必要としていないケースもあります。彼らはステークを持ちながらも帯域を余らせており、RPCプロバイダなどの事業者と個別契約を結んで帯域を貸し出すことがあります。しかし、これらのやり取りは非公開で行われ、条件や価格はバリデータごとに異なります。
標準化されたマーケットが存在しないため、帯域を求める側も提供する側も、正しい価格と適切な相手を見つけることが困難です。その上、設定維持や確認、メンテナンスには大きなコストがかかっています。

非流動化するネットワーク資源

現在、Solanaのステーク資源は「報酬を得るための固定的な預け入れ」として扱われています。ユーザーがステークを行っても、その資金はネットワーク内部に留まり、他の利用者にとって新しい価値を生み出すことはありません。こうした非流動的なステーク構造は、Solanaネットワーク全体の柔軟性を損なっています。
実際には、ネットワーク上には「帯域を使いたいがバリデータを運用していないユーザー」と「バリデータを運用しているが帯域を必要としないユーザー」が同時に存在しています。この2者の間で価値が流動できれば、Solanaの通信効率と経済性は大きく向上するはずです。
しかし現状では、それを実現するための仕組みがありません。ステークと帯域が独立して存在している限り、ネットワークはその潜在的なパフォーマンスを発揮できません。効率的で公平な通信を実現するためには、ステークを帯域として再循環させる仕組みが必要です。

マーケット不在による価格の不透明性

SWQoS帯域は、Solanaのパフォーマンスに直結する貴重なリソースです。しかし、その価値を適正に評価し、交換できるマーケットは存在していません。
一部のバリデータがRPC事業者と個別に契約しているものの、価格設定や契約内容は公開されておらず、取引は限られた範囲でのみ行われています。そのため、どの程度のステーク量がどの程度の帯域価値を持つのかという基準が曖昧で、取引の透明性が確保されていません。
この不透明さは、Solanaネットワーク全体の効率性を下げる要因になっています。適正な価格が形成されない限り、ステークを効率的に活用しようとする参加者は増えず、SWQoSを活かした高品質な通信も限られた層に留まり続けます。